何もない世界

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芥川賞受賞作品 沼田真佑「影裏(えいり)」読んだ感想

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芥川賞を受賞した沼田真佑「影裏」を読みました。正直芥川賞はあまり興味なかったんですが、本屋で平積みされていてページが100ページも満たないのですぐ読めそうだと思い買ってみました。

実際すぐ読み終わりました。その感想を書きたいと思います。

 

 

【あらすじ】※ネタバレあり

 

医薬品会社に勤める主人公、「今野」31歳は数年前に東京から岩手に転勤してきた。なかなか土地や人に馴染めず寂しい思いをしていた。

ところがある日、同じ会社で働く「日浅」と出会い、たびたび2人で釣りに行ったり、酒を飲んだりする仲になる。

しかし、突然日浅が会社を辞めてしまう。日浅は携帯を持っていなかったので連絡が取れなかった。

しばらくしてから日浅と会うことが出来た。日浅は結婚式や葬式などを挙げる互助会の勧誘する会社の営業をしていた。

その後、2人はまたよく釣りに行くようになる。

しかし、日浅はある時、今月の仕事のノルマがあと1口足りず、このままでは解雇されてしまうと言い、今野にも契約してもらう。

その後、些細な事で2人の中にわだかまりが出来、次第に疎遠になっていく。

そして震災が起きる。

今野は、同じ職場で働いている人に日浅が「死んだかもしれない」と聞く。

話を聞くとその人も日浅の互助会の契約をしていて、しかもを日浅に30万貸していた。

 

その後、日浅を探しに出かけるが手掛かりがない。地震発生時、日浅は海で釣りをしていて津波に巻き込まれた可能性がある。

手掛かりがないまま、最後に、疎遠になっているという日浅の父親を訪ねる。

そこで今野は父親から日浅がどんな人間だったのかを聞かされる。

卒業証書を偽造したり、父親から大学の授業料を騙し取っていたり。

そんな息子とはもう縁を切った。でも息子は死んでいない。いずれ泥棒なんかして新聞に名前が出る。と父親は語る。

数日後、銀行のATMを破壊して捕まった男が新聞に載っていた。

「わたしは日浅がその男の同胞であるのを頼もしく感じた」

 

 

以上が大体のあらすじなんですが、中盤で今野の元恋人(同姓)が出てきて、主人公が同性愛者である事が分かるのですが、物語にどういう関係あるのかは分からないです。

この小説は東日本大震災を題材にしていて、とても淡々と話が進められていきます。

どこか全体的に薄暗い雰囲気を纏わせつつも、岩手県の川や魚、自然の描写がリアルに描かれています。文章を見ていても綺麗だなと思います。でもそれが逆に、巨大な自然の不気味さを感じます。

自然描写は多いんですが、人間の内面描写は少なめです。なので読み終えた後に少しもやもやします。

「日浅」も一見釣り好きのワイルドな男なんですが、自然などの巨大な物の崩壊に興味を持つという一面を持っています。

どちらの人物も謎があるというか、心の一部分が欠落しているような印象を受けます。

読み終えた後は人間の孤独と、分かり合えない寂しさなんかを感じました。

 

すごく面白いという感じではないですが、個人的には結構好きです。