何もない世界

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戦いの後は何も残らない。長曾我部元親の生涯「夏草の賦」司馬遼太郎著

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最近、司馬遼太郎の作品を片っ端から読み漁っていますが、その中でも個人的に好きな「夏草の賦」を紹介します。

 

四国土佐の片田舎から天下を目指した長曾我部元親。権謀術数をめぐらせ四国の覇者になりますが、豊臣秀吉によって土佐一国に戻されてしまう。

20年もの間戦い続け、多くの犠牲を払い、やっと手に入れた領地も秀吉によって取られ、今までの野望が潰えてしまう。夢や志を失った元親は急激に老いてきます。

 

そして長男信親が戸次川の戦いで戦死し、元親はいよいよ世の中を捨てたような、なにもかもどうでもいいような感じになります。

 

そして秀吉の死後、関ケ原の戦いの前年、長曾我部元親は61歳でこの世を去ります。跡を継いだ四男の盛親は、父親から今後の身の振り方を一切教えられなかった為に、成り行きで石田三成側に付き、敗亡し、土佐を取り上げられてしまう。

そして、後の大坂の陣で敗れ、盛親は斬首され長曾我部家は断絶、歴史から消えることになる。

 

 

この小説を読んだ後は、青々とした夏草が生い茂っていた景色が、いつの間にか荒廃した土地に変わり、蝉の抜け殻がからからと風に吹かれて転がっていくような、夢から醒めた後の虚しさの中にも、少しだけの清々しさが残るような、そんな小説でした。